「中医学」が得意な不調のケアって?漢方や東洋医学との違いも解説

なんとなく調子が悪い、もやもや不調。そのうち治るだろうと我慢したり、原因がわからないからどうしようもないと諦めていませんか?

このようなもやもや不調に応えるのが、中国発祥「中医学」の知恵です。
あまり聞き慣れない「中医学」ですが、そこには私たちが毎日を心身ともに健康に過ごせるヒントがたくさん詰まっています。

本記事では、どのような不調をケアできるのかを中心に、中医学の基本的な考え方をご紹介します。

中医学の3つの基本的な考え方

著作者:dashu83/出典:Freepik

病気と診断される前の段階から心身の不調にアプローチできる中医学。その背景には「3つの基本的な考え方」があります。

心身の健康を保ち、人生を豊かに生きていく上で欠かせない中医学の考え方をご紹介します。

① 病気を未然に防ぐ「未病」

最近では、「未病」という言葉を聞くことも増えてきました。
「未病」とは、健康と病気の間にある状態を言います。
肩こりがある、手足がむくむ、睡眠が浅い…誰もが経験したことがあるような小さな不調ですが、不調は不調。体内のバランスが崩れているサインです。
このサインを見逃さずに、状態が悪化して病気になる前にケアすることで病気を防ごう、という考え方がこの「未病」にあります。
病気になってからではなく、病気になる前に対策することが大事なのですね。

② 人ぞれぞれの体質を大切にする

中医学の診断方法は「弁証論治(べんしょうろんち)」と呼ばれていますが、これは簡単にいうと、患者の体がどのような状態だから症状が出ているのか「原因」を特定することで治療方針を立てる、というものです。

同じ不調でも、その「原因」は実はさまざま。人により体質や状態が違うので、その人にとっての「原因」を特定して治療方針を立てるというのが大事なポイントなのです。

弁証論治」での患者さんへの問診は少し独特です。基本的な症状についても聞きますが、それ以外にも生活習慣や運動量、好きな食べ物を聞いたり、脈やお腹を触ったりしてその人の状態を診断します。そして、その症状が出る理由を総合的に探って、症状を緩和しながらも同じ症状が出ない体づくりを目指していくような根本治療をめざします。

個人に寄り添うことで健康をめざす、オーダーメイドで自分に合うケアを見つけられるのが、中医学の魅力のひとつと言えます。

③ 心身のバランスを整える

中国の哲学では、すべての物事は「陰」と「陽」の2つにわけられ、相対するふたつの要素がバランスをとって成り立っていると考えられています。

中医学もこれに通じていて、心身の陰と陽のエネルギーのバランスを重視しています。昼(=陽)はめいっぱい活動して、夜(=陰)は穏やかに休んで過ごす。それが自然界や人間としてもっとも調和の取れた健康的な姿と考えられます。

体の中にももちろん陰と陽が存在しています。体に熱(=陽)は必要だけど、上がりすぎてもいけない。体に水(=陰)は必要だけど、ありすぎるとむくみや不調を引き起こす。何事もあればあるほど良いわけではなく、適切なバランスがあるのです。

心身に不調を感じたときは、必ずどこかにバランスの乱れがあります。そんな時は、きちんと休めているか?食事が摂れているか?心のバランスが安定しているか?と自分の生活を振り返ってみましょう。

 

中医学でケアできるのはどんな不調?

西洋医学とは別のアプローチで心身の不調をケアする中医学。
どのような不調をケアする時に適しているか、3つの得意分野をご紹介します。

① 病名のない不調

はっきりした病名は分からない、病気というほどではないけど、なんとなくお腹の調子が悪かったり、疲れ抜けなかったり…。このような不調に悩む方はたくさんいます。

東洋医学は、見逃しがちな小さな症状も必ず理由があります。病名がつかなくても「血が不足している」「自律神経が乱れている」など体の中に要因となる体質(証)があります。そのため、病名がはっきりしない状態でもケアをはじめることができます。

② 病気と診断される前の不調

中医学では、病気にはなっていないものの心身のバランスが崩れ不調である状態を「未病」と表現します。

未病の状態では検査結果に異常値が出ず、西洋医学では病名を診断したり治療を施したりすることが難しいもの。一方で中医学は、未病の状態から心身のバランスを整え、不調をケアする点に特徴があります。

不調に感じている状態を観察し、病気になる前にいちはやくアプローチできるのは、中医学の得意分野のひとつです。

③ 自律神経や免疫系に関する不調

細菌やウイルスなどによる感染症や、手術が必要な病気は西洋医学の得意分野です。一方、中医学は自律神経や内分泌系、免疫系へのアプローチを得意としています。

なんとなくイライラしたり、体がだるいと感じたりする不調の多くは、自律神経や免疫系が関係しています。仕事による不規則な生活や食生活の乱れは、不調をさらに加速させてしまいがち…。

中医学では、自律神経や免疫系にはたらきかけることで、健康的に明るく過ごすための土台作りに貢献できるのが魅力です。

中医学と「東洋医学」「漢方」「薬膳」の違い

中医学を深く知ろうとすると、「東洋医学」「漢方」「薬膳」といった似たようなキーワードが出てきます。一見するとどう違うのか、分かりにくいですよね…。

より深く中医学を学べるよう、それぞれの言葉の違いについて紹介します。

中医学と東洋医学の違い

「東洋医学」とは、中国で発祥して東アジア(中国・韓国・日本など)で発展した医学の総称。韓国の韓医学・インドのアーユルヴェーダなどが代表例です。

東洋医学の中でも、発祥地である中国でそのまま発展した医学が「中医学」。

中医学と漢方の違い

中国で発展した「中医学」に対し、「漢方」は中国で発祥した学問を日本で発展させた学問です。

さかのぼること江戸時代・後期。西洋医学が流入した際に、流派を区別するため、蘭学から派生した「蘭方」/中医学から派生した「漢方」という呼び名が定着しました。日本で発展した学問であることから、“日本”漢方と呼ぶこともあります。

時は鎖国時代。日本独自で研究が進んだため、中医学と漢方では診断方法や薬の使い方が多少異なります。

「薬膳」とは

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中医学の考えをもとに処方される薬は「漢方薬」。漢方薬は、自然界にある様々な材料(植物から動物性材料、鉱物まで!)の効能を導き出して生薬として配合したものです。同じような考えのもと、普段の食生活からも養生できるよう編み出された食養法を「薬膳」といいます。スープやお茶、お酒まで、日頃から口にする食べ物から体調を整えるための、身近なヘルスケア法なのです。

薬膳ときくと、生薬の素材をふんだんに使った健康食がイメージされます。しかし、薬膳の本質は「自分の体内バランスを知り、それを整える食材を食べる」こと。スーパーで売っている食材でも、自分の体質を知り、体質に合った食材を選んで食べることが薬膳なのです。

とはいえ、体質を知るのは難しいこと。自分に合うケアが見つかるよう、自分の体質や心身の状態を知る方法やヒントを、引き続きこのブログで発信していきたいと思います。

中医学の考えを取り入れて、健康的で充実した毎日を

中医学がどのような学問なのか、どのような不調をケアするのか、基本的な情報をご紹介しました。

【まとめ】
・「中医学」は病名が分からなかったり、病気になる前の不調にアプローチできる学問。自律神経や免疫系のケアも得意分野。
・一人ひとりの体質に合ったケアで、病気を未然に防ぎ、心身のバランスを整えるのを大切にする考え。
・アジア発祥の医学を総じて「東洋医学」と呼び、その中でも中国の医学が中医学である。
・日本独自に発展した中医学の系統を「漢方」と呼ぶ。

中医学の考えをもっと知ってもらえるよう、引き続きこのブログでたくさんの情報を発信していきます。

自分の心と体を大切にして、健康的で充実した毎日を過ごしましょう。